『シーゲル博士の心の健康法 (新潮文庫)』(バーニー・S. シーゲル)読み終わり。
がんやエイズなどの死を予感させる病気がきっかけとなり,自分の生き方を大きく見直したり,人生の本当の素晴らしさに気づく人がいます。その結果として,症状が改善したり自然治癒してしまうことがあります。外科医のシーゲル博士が出会った,そういう「例外的患者」の行動や声に耳を澄ませて,真の人生を歩むためにすべきこととしてはいけないことをまとめた本です。
筋萎縮性側索硬化症から復活した女性の「本気で生きたいと思ったら,まず今から十分間を真剣に生きるべきだ」とか,腫瘍学者の「がん患者の心の平和と意識の変化は,人生を,ふつうわれわれが考えているようなものと見るのをやめ,愛を与えるための一瞬ごとの機会と見ることで,実現するようだ」など,生きるための指針といえる言葉に多く出会うことができます。
「今ここ」,この一瞬を繰り返し慈しむ,味わう。そのことによって,この世に生きながら天国を味わえるのだとシーゲル博士は言います。大切なことは病気が治ること,死を避けることや死から遠ざかることではなく,本当の意味で癒やされ,また周囲に癒やしをあたえることだと言います。本を読んだ後,『千と千尋の神隠し』に出てくる釜爺の「愛だよ,愛」という言葉が頭の中を駆け巡っています。
今まさに死を見つめる必要のある友人や,その人を近くで支える人に,もし一冊だけ本を薦めるとしたら,この本を選ぶような気がします。